大山学先生のコレ !
杏林大学皮膚科学教室教授
①仕事・生活への還元をめざすもの ②心の安静を目的とするもの ③純粋なエ ンターテイメント にわけられる。
①はいわゆるビジネス書や人物伝であり、最近では伊丹敬之著 「難題が飛び込む男土光敏夫」(日経ビジネス人文庫) などがその例であるが、読者が知りたいのはむしろ、 後二者のカテゴリーの書籍であろう。新刊ではなくあくまで私が「新しく出会った本」ではあるが、頭に浮かんだのは次の二冊である。
亡命者の古書店
佐藤 優 著 角川文庫
本書は、背任と偽計業務妨害容疑で執行猶予付き有罪となり外務省を追われた経緯をもつ異色の元外交官 佐藤 優氏による自叙伝である。といっても 、 氏がうけた「 国策 」 捜査についての記載はない。神学生であった時、 チェコのキリスト教思想、特にフロマートカの神学に魅了された若き外交官とチェコスロバキアから亡命せざるを得なかった古書店主の英国での静かな交流が淡々と記載されている。二人の会話は、とくにキリスト教とその歴史についての堅牢な知識と深い思索に裏付けられており、浮ついたところがない。静謐だが饒舌である。 ゆったりとした時間の流れを感じることができる。 いろいろあって心がぞわぞわする夜などに読むと物語に入り込み、知らないうちに鎮静効果が得られる不思議な本である。私はカトリックのミッションスクールに通ったのでより物語に入りこむのかも知れない。暗幕のゲルニカ
原田マハ 著 新潮文庫
実は私はアート好きである。特にカンディンスキー、パウル・クレー、 ホックニーあたりを好む。 本書は、ピカソに魅せられたMoMAの日本人女性キュレーターがニューヨーク、スペインを舞台に名作「ゲルニカ」の貸し出し展示をめぐってテロリストと渡り合うストーリーと、愛人の写真家の目を通してみた若き日のピカソが「ゲルニカ」を描くことによってナチスに抵抗する姿を交錯させた快作である。著者が専門とする美術史の記述も多いが、アー ト好きならずとも一気に読めてしまう作品となっている。こうした書籍は、純粋に楽しみとして読むことにしており、新幹線や飛行機移動の共として欠かせない。一貫性を欠くが、1の書籍をベースに、気分と状況に応じて2、3を載せていくのが私流の読書術なのである。