天野 正宏先生のコレ ! 宮崎大学医学部感覚運動医学講座 皮膚科学分野 教授 還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方 著:出口治明 講談社現代新書 コロナ禍でほとんどの学会がリモートとなり、“巣ごもり需要”が拡大 した2020年、何を隠そう私は読書よりテレビでドキュメンタリー番組や映画をよく見た。夏にNHK BS1で「最後の講義『大学学長 出口治明』」 を拝見する機会があった。出口先生は立命館アジア太平洋大学(APU) 学長であり、論旨明快に説明する姿とその言葉の中にある力を感じた。 APUは私のいる宮崎県のお隣、大分県別府市にある。出口先生の著書に「還暦からの底力」という本があり、自分も還暦を迎えた年だったので購入した。いわゆる“ノウハウ本”では全くなく、“平均寿命より健康寿命”、 “人・本・旅で勉強や学びを一生続ける”、“60歳は人生の折り返し地点に過ぎない”などなど、生涯教育を問われている医師の私にも腹落ちする内容だった。また歴史書も多く執筆されている出口先生ならではの切り口で、“世界の見方を歴史に学ぶ”姿勢はまさに重要で、歴史オタクの私も興味深く読ませていただいた。最後に少子化対策、男性の育児休暇取得、 クオータ制導入など、女性医師の多い皮膚科ならではの台所事情にも解決策を見出せるかもしれない提言は必見である。 砂の器 (上・下) 著:松本清張 新潮文庫 これもまずは映像で「砂の器〈デジタルリマスター版〉」を拝見した。ご存知、松本清張原作のミステリーである。昔日の美しい“日本の四季”が 40年以上も昔とは思えない映像と共に描かれて いた。題名は知っていたが、恥ずかしながら上巻から読んでみた。皮膚科医として絶句したのが “ハンセン病”への偏見と差別、そして悲しい結末である。コロナ禍にある現代も社会は少しも変わっていないのではない?、“自粛警察”、“マスク警察”、新型コロナウイルス感染者への誹謗中傷などなど。ネット社会のため瞬く間に情報が拡散し、以前より偏見と差別が増幅されている印象がある。医師になりたての頃、大学病院でハンセン病の患者さんを診断し、療養所へ紹介状を書いた同僚の記憶が鮮明に蘇った。