安部 正敏先生のコレ !
医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 院長
銀河
彩雲堂
グルメ、音楽そして映像......4年連続の登場に読者の先生方も、もはや蛇蝎のごとく嫌厭されているのではとの疑念を持つ。何故筆者だけが毎度登場するのか? 依頼できる先生が限られている......そんなことはない。事実、筆者以外は毎年御高名な先生の達文が並ぶ。ただし不思議と一度きりである。ヒントは本誌が“キャリア支援”であることにありそうだ。実は筆者は某皮膚科専門誌に“鉄道と皮膚”に関するエッセィを連載しており、幸か不幸か昨年それが単行本化した。当然、筆者としては出版元の金原出版のプレッシャーもあり、本誌で一押ししたいものの、案外日皮会事務局の本欄担当N氏はこの極めて利己的な行為を暗に誘導し、最後に“私的流用は言語道断!”とばかりに問題化させ、結果筆者は専門医剥奪などの憂き目に遭うかもしれぬ。戒飭も立派な “キャリア支援”の方策である。そこで謀を巡らし、穏便に済ませるために“書籍”を除外することとした。
まず“2020年のコレ!”は、筆者に似合わぬスゥイーツである。筆者が育った松江市は、和菓子の宝庫だ。昨年その名店の彩雲堂より“銀河”と名付けた羊羹が限定発売された。味は勿論、見た目が頗る美しい。
実は“銀河”とはJR西日本“WEST EXPRESS銀河”に由来し、最近久々に登場した夜行列車をモチーフにした逸品である。和菓子は愛でる楽しみがあるが、まさに列車が忠実に再現された芸術品だ。ここまで記しふと気が付く。鉄道が出てきてしまった。これは拙い。
では音楽。昨年、ふと耳にしたラジオから“岡村孝子”が流れてきた。30年来のファンであり、大病を克服され何よりである。音楽は一瞬で過去の追憶に浸れるタイムトリップを可能にする。中でも“電車”という曲が良い。その叙情的旋律に暫し時を忘れた。が、うっかり、またもや鉄道が出てくる有様である。 ならば映画。当然“鬼滅の刃”であろう。しかし、天邪鬼である筆者は、映画はおろか漫画さえ全く見ていない。では何故“2020年のコレ!”なのか? 驚異的な興行収入を上げた映画は“無限列車編”である。これを受けてJR東日本や九州はリアル“無限列車”を臨時運行した。コロナで減収に喘ぐ鉄道業界において何と涙ぐましい努力であろう。感涙禁じえぬ......がまた話題が鉄道になってしまった。
今回、自らの鉄道エッセィ本を前面に出したい冀求を必死に堪える筆者の堅忍不抜なる姿は、堂々“キャリア支援”のサンプルに値しよう。ただし、これだけ鉄道が見え隠れし、剰え、冒頭には“おすすめの本”なんぞと書かれてしまい面従腹背は否めないが......この後の恒例N氏のコメントが楽しみである。と記し、ふと気が付く。筆者の連続登場は、N氏が本誌に書きたいのだ! 冒頭の疑問は無事氷解! 来年モマタ安泰ナリ。
スティホームのお供に
スティホームのお供と言えば、通販、Netflix、そして読書である。本屋さんで最新刊を物色するのが好きな為、しばしば近所のK國屋書店に足を運ぶ。ここは小説から学術書、医学書まで揃う稀な店舗だ。医学書フロアを訪ねてみたところ、皮膚科の棚にいつも通り、御高名な先生方が書かれた立派な本が並んでいた。が、ふと平積みの方に視線を移すと、なんと言うことであろうか! 真面目な本に混ざり、A部先生が書かれた鉄道エッセイ集が山積みになっているではないか!!
そしてまた不思議なことに本の帯には、かの大先生の絶賛の言葉が書かれている......驚き慄き、恐る恐る手にとり一読したところ、鉄道に全く興味がない私だが、とても面白く、気がつけばそのエッセイ集を持ち、レジに並んでいた......あぁ、今年もまた本の紹介をする羽目に......。スティホームの強い味方、「憧鉄雑感」(金原出版)は絶賛発売中です!(N)