日本皮膚科学会キャリア支援

DERMA'S LOUNGE 2021 巻頭のことば

あなたの持つすべての「資源」を
目の前の患者さんのために

多田弥生

Release2021.7.20

若手皮膚科医の皆さんは、今、皮膚科学に対してどのような思いを持っているだろうか。思ったより大変、思ったほど面白くない、などもあるかもしれない。

診療の時はどうだろう。私がいつも意識しているのは、目の前の患者である。目の前の患者は、こちらがどんな思いで皮膚科学に臨んでいようが、関係ない。極端にいえば、臨床が好きだろうが、嫌いだろうが、さらには、医師が忙しかろうが、暇だろうが、関係ない。今、自分が困っている皮膚の悩みを、一緒に解決してくれるかどうかが重要なのである。私は、自分が持っている「資源」のすべてを使って、目の前の患者の皮膚の悩みを解決するのが皮膚科医の仕事だと思っている。

ここでいう「資源」とは、知識、経験、技術、情熱、体調などのすべてを含む。英文論文を読んで調べられること、カンファランスで他のエキスパートの意見を聞ける環境にあること、正しい診断までに至った臨床経験の数が多いこと、患者に怒られたことがあること、患者の訴えを疾患ごとに標準化できていること、自己向上心をかきたてる同僚がいること、体力があること、など「資源」の要素はたくさんある。ここで重要なのは、この診療能力の礎となる「資源」の豊かさは経時的に変化し、皮膚科医ごとに異なることである。若手皮膚科医は、組織に所属しているため、組織の学びに参加し、組織を構成する医師の意見を聞ける状態にあり、これも「資源」である。別の皮膚科医との誌面上での出会いも「資源」である。

キャリア支援委員会は皆さんの「資源」を豊かにすることをその活動の大きな柱に据えている。 ぜひ、この委員会を有効活用いただきたい。
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